コーヒーのTDSと収率の使い方
こんにちは。
↓前回の記事でコーヒーにおけるTDS(濃度)と収率の概念を説明しました。
こちらにについては理解して頂けたかと思います。
もしわからなければコメントもらえたら、できる限り答えます!
さて、それではTDSと収率をどのように生かしていくのか順番にご説明します。
今回の記事はこんな方におすすめです。
コーヒーのTDSと収率
コーヒーおけるTDSと収率
TDS…水にコーヒーの成分が何%溶けているか
収率…使用したコーヒー豆から何%成分を取り出したか
このような意味で捉えてもらえたら良いです。
さて、TDSは専用のTDS計で測るのですが、TDSがわかれば収率がわかります。
↓VSTのTDS計(VSTのは非常に正確で優秀。その分価格も高い)
↓AtagoのTDS計(現在、店舗で使用中。VSTより安価。VSTには劣るがクオリティー管理に重宝している)
収率の計算の仕方
TDS% × コーヒー抽出量g ÷ 使用したコーヒー豆量g = 収率%
例えば、16gの豆を使って、240gのお湯をかけて、220gのコーヒーが抽出できた時、TDSが1.3%なら収率は以下です。(この場合ブリューレシオは1:15です)
1.3% × 220g ÷16g =17.9%
次に、コーヒ豆を15 gに減らして、粒度を細かくする調整をした時も考えてみましょう。お湯の量は同じ240gかけて220gのコーヒーを抽出しました。TDS(濃度)は少しだけ下がり1.27%だったとしましょう。(この場合ブリューレシオは1:16です)
1.27% × 220g ÷ 15g = 18.6%
このようにTDSがわかれば、収率がすぐに簡単に計算できます。
上の例だと、粉量を減らしてメッシュを細かくすることにより、TDSは少し下がったがほぼ一定で、収率を上げることができていることがわかります。
収率からわかること
これは色々あります。
まず
Specialty Coffee Associationによると
TDS(濃度) 1.15~1.35%
Extraction Yield(収率) 18~22%
の範囲が望ましい
とのことです。
さて、コーヒーは様々な成分を持っていますが、お湯にすぐ溶け出しやすい成分と少し時間をかけて溶け出してくる成分があります。
一般に酸味成分は初めに溶け出し、続いて甘さの成分、その後に苦みの成分と溶けだしてきます。
つまり収率を上げるということは、より甘さや良い質感を引き出す方向でありますし、苦みや渋さを引き出すリスクがある方向です。
反対に収率を下げるということは、苦みや渋さを抑える方向でありますし、甘さが足りなかったり酸っぱくなるリスクがある方向です。
このことを理解すると、テイストをみたときに収率を上げる方向で調整しようか、それとも下げる方向で調整しようかと理論的に考えることができます。
また美味しいバランスの調整を行った時に、収率が低すぎるという結果がわかれば、そのコーヒーは焙煎豆の状態としてあまり良いとは言えないかもしれません。
コーヒーから成分を引き出そうとするとすぐにネガティブな味になる状態という理解ができるからです。
またある程度のTDS、1.15~1.3%をキープした時に収率がとても低いという場合、多くの豆を使っているということなのでそれだけ原価が上がっているということもわかります。
このように収率を理解すると、いろいろな面からコーヒーを知ることが可能となります。
レシピ調整とTDSと収率の関係
さてここまで理解ができると、コーヒーをドリップしてテイストを見たとき、「もっと収率を上げてみよう」「収率はとりあえず一定でもっとTDSを上げてみよう」などと考えて調整してみる段階です。
ここでレシピ調整とTDSと収率の一般的な関係を書きますので参考にしてみてください。
- メッシュを細かくする→TDSは上がり、収率も上がる
- 粉量を増やす(お湯減らす)→TDSは上がり、収率は下がる
- 湯温上げる→TDSは上がり、収率も上がる
- 攪拌を強める→TDSは上がり、収率も上がる
- 抽出時間を長くする→TDSは上がり、収率も上がる
反対でメッシュを粗くするなら、TDS、収率の動きも細かくの逆となりますので省略します。
頭の中でレシピ調整により抽出がどのようになるかイメージできるととても良いです。
最初はなかなか「?」となることもあると思いますが、慣れると割と簡単にイメージできるようになります。
収率とTDSを理解できるバリスタは重要
ここまで理解できると、コーヒー抽出をする際も理論に基づき、頭を使うようになっているでしょう。
レシピを考える時もしかりです。
これから自動ハンドドリップマシンやブリュワーはもっと進化していきます。
同じことを正確にする、決められたことを正確にするのはマシンは得意です。
そのマシンをしっかり生かすことができるTDS、収率への理解があることは重要です。
逆に理解がない状態はまずいので今のうちに解消しておきましょう!
TDS、収率の値が全てではない
さて、ここまでTDS、収率についてお話ししてきました。
ただお気づきの方もいると思いますが、同じTDS、収率でも味が違うことがあります。
豆の状態が同じという前提があれば、抽出におけるプロセスによって味が変わることがあります。
例を挙げると、
- 酸味成分のみが出やすい抽出前半にお湯による攪拌を強めて、TDS1.3%収率20%
- 甘さや苦みが溶けやすい抽出後半にお湯による攪拌を強めて、TDS1.3%収率20%
濃度は同じ、さらに使用豆からどちらも20%成分を溶け込ませたとしても、味覚が異なることで想像できるかと思います。
また使用する豆によってTDS1.3%の印象も異なりますし、収率20%の印象もだいぶ異なります。
ですので何%だから良くて何%だから良くないとか決め付けすぎるのは良くありません。
どちらかというとTDSを増減させた時、収率の増減をさせた時の味覚イメージが持てることが重要かと思います。
さらに、収率とは使用する全てのコーヒー豆から平均すると何%成分を取り出したか、です。
もっと小さなところに焦点を当ててみましょう。
粉1つ1つはどうなっているでしょう?
そうです!
細かい粉からのたくさん成分が出て収率は高いですし、粗い粉からの収率は低めです。
それらを全部合わせて平均化したものが僕たちが計算する収率ですし、味覚についても混ざりあったものを捉えています。
これらを理解した上で、TDS、収率を使っていくことができたら、コーヒー抽出する時もさらにわかりやすく、楽しくなるでしょう。
少し長くなりましたが、これで一旦、TDS、収率の話は終わりにします。
みなさん、良いコーヒーライフを。
それではまた次の記事でお会いしましょう!